先端材料/電子物性研究室

石川 豊 教授

Laboratory

研究室紹介

ナノサイズの新しい材料の創出

1980年代より、日本では代表的な半導体材料であるシリコンによる集積回路技術の研究・開発が進み、半導体は「産業の米」と呼ばれた時代がありました。しかしながら、最近は、集積回路の微小化が限界に近づき、シリコンに替わる材料の探索が必要になってきました。そこで注目されているのが、元々小さな原子、分子を組上げる形で新しい材料を生み出すボトムアップ技術であり、その中心素材が「カーボンナノチューブ」です。炭素だけでできたナノサイズの直径を持つチューブ状の材料で、鋼鉄以上の強さがありながら軽く柔軟で、電気的にも大変優れた性質を持っており、電気電子工学に限らず、広く応用が期待されている新素材です。当研究室では、カーボンナノチューブを成長させる技術の開発について研究しています。

主な研究紹介

カーボンナノチューブの低温成長

現在の大規模集積回路(LSI)はシリコンを素材としており、その一部にカーボンナノチューブを置き換えることができれば、LSIをさらに微小化でき、動作速度を早くすることも可能です。しかしながら、通常、カーボンナノチューブの成長には600℃以上の温度が必要で、LSI構造の耐熱温度450℃を遥かに越えていて、カーボンナノチューブの成長中にLSIが壊れてしまいます。そこで当研究室では、400℃以下での実用に必要なレベルの高密度なカーボンナノチューブの成長技術を研究しています。写真は、450℃で半導体シリコンの上に、ブラシにように垂直配向成長させたカーボンナノチューブの断面電子顕微鏡像です。これを、400℃以下で実現しようというわけです。

金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブの作り分け

カーボンナノチューブには、その結晶構造により、電気の流れやすさが金属的なものと半導体的なものが存在し、通常の成長方法では、両者が混ざって成長してしまいます。これでは、LSIへの応用ができません。当研究室では、ナノチューブが成長する起点(根っこ)になる物質を制御することにより、金属性と半導体性のナノチューブを作り分ける技術の開発を行っています。写真は、人工合成ダイヤモンドを起点として成長させたカーボンナノチューブの電子顕微鏡像です。

線状のものがカーボンナノチューブ(粒子はダイヤモンド結晶)