竹村 暢康 准教授
Laboratory
電波応用工学研究室は、2014年に開設し、電波応用としてのアンテナシステム、電力伝送システムを発展させ、電力を供給するために無線技術を利用した新しいエネルギーネットワークや次世代無線通信用アンテナについて研究を進めています。当研究室では、電磁界解析や高周波回路解析など研究する上で必要な知識や、卒業研究を通じて「計画力」や「自己管理能力」、報告書の書き方やゼミでのプレゼンなどによる「プレゼンテーション能力」といった、社会に出たときに様々な仕事に対応できるような基礎的な力を身に着けられるよう指導しています。
環境発電(エネルギーハーベスティング)と呼ばれる身の回りの環境に存在する僅かなエネルギーを回収して電力に変換する技術に対する期待が近年高まっています。携帯電話や無線LANといった空間の電磁波から電力を回収し、低消費電力機器を動作させる再利用エネルギー源としての活用が期待されています。また、非接触電力伝送技術では、近年、電磁誘導方式を用いたものが製品化されるなど、実用化が進んでいます。さらに伝送距離を長くするため、より長距離を伝送できる磁界共鳴方式に注目が集まっており、電気自動車の充電や室内のコードレス化などを実現できると考えられています。当研究室では、空間の電磁波からより多くの電力を回収し再利用する新たな手段を実現するため、異なる指向性を有するアンテナを電力回収の手段として適用した電力回収率の向上に関する検討や、磁界共鳴方式を利用した通常のコイルよりも高いQ値を実現可能なハニカム巻きコイルによる非接触電力伝送について検討しています。
近年、超広帯域(Ultra Wideband: UWB)システムは高速無線通信への利用だけでなく、レーダ、測位、BAN(Body Area Network)など、様々なアプリケーションへの応用が検討されています。UWBシステムの帯域は、3.1~10.6GHzの帯域が割り当てられており、この帯域を満足する広帯域な特性を有するアンテナが求められています。また、移動体通信では、周波数利用効率を上げるために信号伝送を同一周波数帯域で同時送受信するFull Duplex MIMOシステムが検討されています。当研究室では、超小型なアンテナ構成を実現するため、誘電体基板上に形成した平面型UWBモノポールアンテナにショートスタブを装荷した構造のアンテナや、Full Duplex MIMOにおける携帯端末のアンテナ選択方式による端末間干渉を抑圧する方法について検討しています。
人体通信は人体を伝送媒体として扱い、通信を行う次世代の通信技術です。人体通信の中でも人体の周りに存在する電界を利用して通信する電界方式による検討が進められており、数百kHzから数十MHzの周波数の搬送波を用いると通信が安定することが確認されています。また、近年高齢者の見守りや侵入者検出用途としてマイクロ波を用いた人体のバイタルセンシング技術が検討されています。当研究室では、人体通信における人体の姿勢や部位を変えた場合の電界強度の変化に関する検討や、アレーアンテナによる人体のバイタル信号検出技術について検討を進めています。