宇賀神 守 教授
Laboratory
アナログ集積回路と無線ハードウェアの研究室です。本研究室では、センサ端末に用いられる狭帯域の無線受信回路、小型発電機、および各種センサ回路などを研究しています。無線受信機は、遠方より送信された非常に微弱な電波からエラー無く情報を読み出すとともに、近距離からの強力な電波を受信した場合でも信号歪を抑えて情報を読み出すという相反する特性を持たなければなりません。また多数の電波が溢れている空間から所望の電波のみを取りだす作業も必須です。我々は、アナログ回路技術を駆使して、これらの要望に応えるハードウエアの開発に取り組んでいます。
アナログ信号と言われて思い浮かぶのは1本の信号線を伝わる信号波形かもしれません。あるいは信号線を2本にして、180°位相の異なる2つの信号が伝わる様子を思い浮かべる方もいるでしょう。前者は単相信号、後者は差動信号と呼ばれます。差動信号の方が外部からの雑音に強く、高い周波数の信号伝送などに用いられます。では、信号線を3本、さらには4本に増やしたらどんなメリットがあるでしょう。色々と良い所があります。本研究では、例えば信号誤差を激減させる回路を研究しています。通常の周波数変換回路(Mixer:掛算回路)をN^2個組み合わせることで、出力に含まれる相対誤差の大きさを2入力の相対誤差の積の大きさにする周波数変換回路を考案しました。これは下図に示されるように、2入力に含まれる誤差がともに1%の場合、出力に含まれる相対誤差は0.01%となり、誤差が激減することがわかります。また発振回路に多相信号による位相補償技術を適用して発振信号の純度を高める研究なども行っています。
LSI設計風景と、出力誤差を圧縮する周波数変換回路およびその特性
振動発電機とは、振動がもっている運動エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスです。主な方式として圧電式、磁石可動式、静電気式があります。本研究では、センサ端末に搭載可能な小型の圧電式振動発電機を検討しています。また発電機の発電電力よりも大きい電力を消費する回路を動作させる場合、充電回路に充電し回路を間欠動作させる低消費電力間欠電力供給回路の検討も行っています。さらにセンサ端末に発電機を搭載できない場合の検討として、超音波により端末にエネルギー伝送にすることも研究しています。エネルギー受信位置において複数スピーカーからの超音波を同位相にするため、超音波位相検知器を作成し、スピーカーの位置構成・音波強度と合成波の位相との関係などを研究しています。
多相回路測定と超音波エネルギー伝送機および超音波位相検知器